ラジオ番組「放送100年 保阪正康が語る昭和人物史 やなせたかし(4)」を聞いて

2025年5月3日に放送されたラジオ番組 「放送100年 保阪正康が語る昭和人物史 やなせたかし(4)」(放送局:NHK)を聞いた。

やなせたかしさんの人生の後半、とくに妻・のぶさんとの死別を経てからの生き方に、深い感銘を受けました。

それまで内向的で控えめだったやなせさんが、あえて「明るく華やかに生きる」ことを選びました。

喪失の悲しみを抱えながらも、前を向こうとする決意の現れです。人は悲しみを抱えながらも、その感情に深い意味を見出し、それを糧にして「他者のために生きる」方向へと進んだのだと思います。

 

のぶさんの「私の命はあなたにあげるわ。長生きしていい仕事をしてね。」という言葉が本当に胸を打ちました。

この言葉は、彼にとって生きる原動力となり、自己の存在を他者のために差し出すような芸術的使命感へと昇華させたのです。

やなせさんの創作の根底には、個人的な痛みと、それを昇華する「希望」への希求があります。

それが、アンパンマンのようなキャラクター――「自分の顔を差し出してでも他者を救う」という存在に結晶しているのです。

 

保阪正康さんの言うように、「自分一人で生きてきたんじゃない」という気づきが、やなせさんの表現や行動をさらに豊かにし、社会や未来の子どもたちに向けて、自分の全存在を注ぐという生き方につながったのでしょう。

 

 

90歳を超えてもなお、東日本大震災の報に奮い立ち、自らの創作で被災地を励まし続けた姿には、真の芸術家としての誇りと使命感がにじんでいます。

人生の終わりが近づいてもなお、「誰かのために」と思って行動する――やなせさんの生き方は、年齢を重ねたからこそ出せる優しさと勇気に満ちていて、私たちに「生きるとはどういうことか」を教えてくれているように思いました。