TV番組「フロンティア 日本人とは何者なのか」を見て
2023年12月6日に放送されたテレビ番組『フロンティア 日本人とは何者なのか』(放送局:NHK)を見て、人類の壮大な移動の歴史と、そこに刻まれた日本列島の成り立ちに深い関心をもちました。
特に、縄文人と東南アジアのホアビニアンという古代の狩猟採集民が遺伝的に近いという発見は、これまであまり意識されてこなかった日本人の「ルーツ」の新たな側面を浮かび上がらせるものです。
従来の“日本列島は東アジア圏に属する”というイメージを覆し、日本人のルーツが東南アジアにまで広がる可能性を示唆しています。
ホアビニアン文化は約1万年前の東南アジアの文化圏であり、その遺伝的つながりは、これまで歴史の表舞台には出てこなかった「南方系ルーツ」の存在を照らし出します。
「すべてのホモ・サピエンスはアフリカに起源を持つ」という人類史の基本と、日本列島に至る移動ルートを重ね合わせ、「南方起源説」という新たな見方を浮き彫りにしています。
この視点は、単なる“起源の場所”の話ではなく、文化的・生態的な交流圏の再評価を迫るものです。
また、「マレー半島から日本列島までの間に交雑の痕跡がない」という点は、逆にこの縄文人のルーツが非常に特異で、孤立した状態で保たれてきた可能性を示唆しており、そこにロマンを感じます。
「わずか1000人の縄文人の集団が、1億2千万人にまで広がっていった」という事実は、人類の歴史における生命の力強さや偶然の積み重なりへの畏敬の念を呼び起こします。
従来の「二重構造モデル」が、縄文人と弥生人の混血によって現代日本人ができたという比較的単純なストーリーだったのに対し、この文章が紹介する「三重構造モデル」は、さらに複雑で動的な日本列島の歴史を示しています。
とりわけ、「第3のDNA」が古墳時代に大量に流入したという仮説は、これまでの歴史認識に再考を促します。
この「第3のDNA」は、特に男性系(Y染色体)に顕著な影響を与えているとされ、古墳時代における強い支配層の流入(例:騎馬民族や渡来系豪族)と関連している可能性があると考えられています。
科学技術が進むことで、歴史の深層が徐々に明らかになっていくことを期待します。
私たちが、縄文、渡来、そして未知の「第3の系統」の血を引く存在なのだという認識は、アイデンティティの捉え方にまで影響を与える深い問いを投げかけています。
「第3のDNA」の正体が何なのか、そしてその人々はどこから、なぜ日本列島にやってきたのかという謎の解明が待たれます。